原子力損害の賠償に関する国の支援に関する会計検査

 中日新聞サイトは3月23日に「原発事故、国の利息負担2千億円 会計検査院が試算」〔共同〕を掲出し、福島第1原発事故の賠償費用などとして国が用意した無利子の貸付枠13兆5千億円を東京電力が使い切った場合、全額回収には最長で2051年度までかかり、この間、国には最大で2182億円の利息負担が生じることが会計検査院の試算で分かったと報じる。検査院は「金利が上がれば負担が増え、新たな資金調達が必要になる」などとしたと記事は伝える。

 この会計検査院の試算は同日に参議院へ提出された報告「東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関する国の支援等の実施状況に関する会計検査の結果について」〔要旨(PDF形式:748KB)本文(PDF形式:9,801KB)〕で明らかにされたもの。この報告は、平成24年8月に参議院から要請があった会計検査の報告書の3回目のもの。1回目は25年10月、2回目は27年3月に行われている。

会計検査院の資料要求権能が国会で質疑されている

 時事通信サイトは3月23日に「会計検査院、財務省に懲戒要求検討=改ざん文書提出で」を掲出し、会計検査院の宮川尚博審議官が23日の参院財政金融委員会で、学校法人「森友学園」への国有地格安売却に関する昨年の同院の検査に財務省が改ざん後の文書を提出していたことを受け、会計検査院法の規定に基づいて同省担当職員の懲戒処分要求を検討する考えを明らかにしたと報じる。会計検査院法31条2項では、検査対象となった官庁の職員が検査に必要な帳簿や証拠書類の提出に応じなかった場合、検査院が懲戒処分を要求できると定めており、宮川氏は「事実関係を踏まえ、法に定められた要件に該当するかについて検討する」と述べたと記事は伝える。

 会計検査院法第31条は「会計検査院は、検査の結果国の会計事務を処理する職員が故意又は重大な過失により著しく国に損害を与えたと認めるときは、本属長官その他監督の責任に当る者に対し懲戒の処分を要求することができる。」と規定し、同条第2項は「前項の規定は、国の会計事務を処理する職員が計算書及び証拠書類の提出を怠る等計算証明の規程を守らない場合又は第二十六条の規定による要求を受けこれに応じない場合に、これを準用する。」と規定している。この第26条は「会計検査院は、検査上の必要により検査を受けるものに帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出を求め、又は関係者に質問し若しくは出頭を求めることができる。この場合において、帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出の求めを受け、又は質問され若しくは出頭の求めを受けたものは、これに応じなければならない。」との規定。






会計検査院長が参議院予算委員会理事会で謝罪

 時事通信サイトが3月20日に掲出した「改ざん見抜けず「遺憾」=財務省文書めぐり検査院長」は、会計検査院の河戸光彦院長がは20日午前の参院予算委員会理事会で、昨年11月に学校法人「森友学園」への国有地売却に関する報告書を国会に提出した際、財務省決裁文書の改ざんを見抜けなかったことについて「適切な確認を行わなかったことは誠に遺憾で、大いに反省し、再発防止策を講じたい」と陳謝したと報じる。河戸氏の説明によると、検査院は予算委の要請に基づく検査の過程で昨年4月、財務省近畿財務局と国土交通省から提出された「貸付決議書」の内容が違うことに気付いたが、財務局に照会したところ、「国交省のはドラフト(草稿)」との説明を受け、同省には問い合わせなかったとのこと。改ざんの可能性を考慮しなかったため、報告書では内容が異なる文書の存在を記載しなかったとか。金子原二郎予算委員長は「財務省の説明をうのみにした。内閣から独立の地位を有する検査院に対する国民の信頼を失わせかねない事態だ。猛省を促す」と強く批判したとの由。

 参議院予算委員会は、平成29年3月6日に、会計検査院に対し、学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する状況について会計検査を行い、その結果を報告するよう要請した経緯がある。その報告書は、こちら

住民監査請求の2日後の補填

 岐阜新聞Webが1月13日に掲出した「過大支出分返還の住民監査請求棄却 安八町監査委員」は、28年10月にあった岐阜県安八郡安八町と大垣土木事務所の職員の懇親会で、町が支払った費用が不当に高額として、同町の男性会社員(41)が、町長に対し過大支出分を町に返還させるよう求めた住民監査請求で、町監査委員が、請求を棄却したものの、「不適切な公金の支出があった」と認めたと報じる。監査結果によると、懇親会には町と同事務所から各7人が参加し、その費用総額23万4792円を、同事務所職員が1人5千円を負担した上で、町が残額19万9792円を一般会計に計上して支払ったとのこと。29年11月7日の監査請求があった2日後に、計19万円余を出席者全員が一般会計に補てんし、監査委員は、監査を実施した昨年12月時点で不当な支出はなかったとして請求を棄却したものの、「行政の事業は町民の税金で賄われていることに鑑み、不信感を抱かれないようにすべき」と指摘したとの由。町は「懇親会は私費で開き、後日徴収するつもりだった。一般会計から支払うことになった経緯に覚えがない」と説明し、男性は「監査請求されたから補てんしたとしか思えない。払えば済むことなのか」と話したと記事は伝える。

国会は再任時にも所信聴取

 NHKサイトは1月23日に「政府 公取委委員長など12機関28人の人事案を提示」を掲出し、政府が、23日開かれた衆参両院の議院運営委員会の理事会で、公正取引委員会の委員長や、会計検査院の検査官など、国会の同意が必要な12機関、28人の人事案を提示したと報じる。記事は、会計検査院の検査官には公認会計士の森田祐司氏を再任するとしつつ、その人事については、近く、衆参両院の議院運営委員会で、所信の聴取と質疑が行われることになっていると伝える。

 会計検査院法第5条第1項は、「検査官の任期は、七年とし、一回に限り再任されることができる。」と規定している。

定期監査結果について監査請求が行われた

 毎日新聞サイトが1月17日に掲出した「看護師等修学資金制度 県監査委、住民監査請求退ける /神奈川」〔堀和彦〕は、神奈川県の看護師等修学資金などの貸付金制度で県が約17年間にわたり返還免除や回収の手続きを怠っていた問題を巡る住民監査請求について、県監査委員が請求を棄却・却下したと報じる。記事は「ただ、「債権管理として極めて問題」と適切な体制整備の重要性を指摘した」とするが、もともと監査委員が指摘した問題であることには言及していない。

 監査請求の対象は、神奈川県監査委員が平成28年定期監査結果報告書で要改善事項の「(1) 経済性、効率性又は有効性の観点から改善が必要と認められる事案 」として明らかにした「③ 看護師等修学資金貸付金の債権管理に関する件」とそれを踏まえて当局が調査した結果である。当該要改善事項の結論は次のとおり。

 したがって、保留案件の累積に伴う事務負担の増大にも鑑みて、消滅時効上回収可能 な債権を速やかに特定し、消滅時効の中断、貸付金の返還請求等の措置を講じる必要が ある。また、免除申請書等を提出しない借受者については、金銭債務の存在について改 めて注意喚起するとともに、その就業状況等の把握に努め、看護師等としての就業や復 職を促進するなど、看護師等修学資金の制度目的の達成を図りつつ、適切に債権を管理 する必要がある。その上で、看護師等修学資金の貸付けから免除、返還に至る事務手続 を借受者にとっての利便性及び債権管理の効率性の観点から見直すとともに、貸付金債 権に係る情報管理の在り方を改善するなど、制度運用に係る事務処理の合理化を図り、 これを事務処理要領等に定めた上で、所要の事務処理体制を整備するほか、必要性が認 められる場合には関連規定の改正を検討する必要がある。


 つまり、監査済みの事案であり、監査委員の結論は出ていて「不適切事項」として整理していない以上、不当性の認定には至らないはず。このような監査請求は法律が想定していないのではないか。


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徳島県の財団に対する委託料の監査請求

 徳島新聞サイトが1月10日に掲出した「記念オケ事業費の返還請求を棄却 徳島県監査委員」は、徳島県がとくしま国民文化祭記念管弦楽団(とくしま記念オーケストラ)事業で県文化振興財団に支払った業務委託料に違法性があるとして委託料5160万円を県に返還させるよう飯泉嘉門知事に求めていた住民監査請求で、県監査委員が請求を棄却したと報じる。記事によると、請求は、28年度の第九演奏会の委託料増額分3660万円と短編映画祭でのシネマオーケストラの委託料1500万円を合わせた計5160万円の随意契約について「主な業務を民間事業者に再委託しており、財団が業務を受託できる唯一の団体ではない」などと違法性を指摘していたとのこと。これに対し、監査結果は「業務の主たる部分は、財団が担っている演奏会の総合調整であるとの県の見解は一定の合理性がある。財団を選んだことに裁量の逸脱や濫用があったとはいえない」としたという。
 徳島県監査委員のサイトには17日現在で監査結果は掲出されていないが、徳島県報道提供資料のページには掲出されている。

愛知県は指摘事項・指導事項・検討事項の3区分

 愛知県監査委員の「平成29監査年度 定期監査の結果に関する報告」〔PDFファイル/681KB〕は、36 件の注意改善を必要とする事項があったとし、その内訳を指摘事項5件、指導事項〔指摘事項の程度が軽微なもの〕29件、検討事項〔問題点又は疑問点がある場合で、改善に向けて検討を指示する必要がある〕2件とし、そのほかに、、地方自治法第 199 条第 10 項の規定に基づく監査意見6件を付記している。
 指摘事項等にはそれぞれ観点を示しており、ほとんどは合規性となっているが、3Eも次のように記載されている。
★指導事項
☆経済性:「使用時期を考慮しないまま、郵便切手が大量に購入され ていたもの」「年度末に郵便切手が不適切に購入されていたもの」
★検討事項
☆有効性:「保管する出土品の点検方法について検討を求めるもの」「砂防指定地における巡視方法の見直しについて検討を求 めるもの」
★監査意見
☆経済性:「郵便切手類について、適切な購入を求めるもの」
☆有効性:「今後の内部統制の整備に当たり、会計事務の内部検査に係る課題を踏ま えて検討することを求めるもの」「重要物品の適切な管理及び有効活用を求めるもの」 (合規性・有効性)「不適正な土地開発行為について、速やかな情報提供の徹底を求めるもの」
 つまり、記載されている42事案のうち8事案が3Eということになる。これは割合として他県より大きく、地方自治法が求めるとおり3Eに留意して監査していることがうかがえる。

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書籍:「監査委員事務局のシゴト」(吉野貴雄著 ぎょうせい 自治体の仕事シリーズ)

 静岡県富士市で自ら希望して監査委員事務局で6年間勤務した著者が、監査委員事務局へ配属されることが決まった人に対して、不安を取り除くために執筆した本。
 著者は、配属されたときに百冊を超える本を読んだが、自治体の監査に関する本が少ないと感じたという〔198頁〕。
 著者は、監査とは保証監査である〔4頁〕としつつ、監査の観点では、合規性・正確性のほかに、経済性・効率性・有効性や実在性・網羅性があるとしている。ただし、実在性・網羅性についての説明は少なく、合規性と何が異なるのかは不明。
 公監査と財務諸表監査は3E監査の有無で大きく異なる点については、3Eの説明は詳しく行われている〔63~70頁〕。しかし、着眼点として挙げられている「切り口」は観念的であり、定例監査で発掘できるものとは異なっている。そもそも、合規性と同様に着眼点を例示できるはずという思い込みが財務諸表監査からのアプローチを思わせる。もっとも、公監査における3Eの重要性は意識されており、「自治体の監査における課題」の一つとして挙げている「マネジメントに活かせた監査ができているか?」〔96頁〕において3Eの重要性を説いている。
 公監査関連の書籍に共通する問題点として、報告基準に関する説明が少ないことがある。この本も例外ではなく、わずかに「処置の区分」と題したコラムで静岡県と茨木市の例を挙げているに止まる。
ISBN978-4-324-10418-7
https://www.amazon.co.jp/%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%82%B4%E3%83%88-%E5%90%89%E9%87%8E-%E8%B2%B4%E9%9B%84/dp/4324104182/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1514709199&sr=1-1&keywords=%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%82%B4%E3%83%88

公監査における3E

 3Eとは、Economy,Efficiency,Effectivenessの頭文字であり、これらは、通常「経済性・効率性・有効性」と訳されている。ここで表現されているものは、COSOの改訂内部統制フレームワークでも用いられている。このフレームでは対象(目的)を「OPERATIONS(運用)」「REPORTING(報告)」「COMPLIANCE(遵守)」の三つのカテゴリーに分けた上で、そのうち「Operation Objectives」について「These pertain to effectiveness and efficiency of the entity's operation, including operational and financial performance goals, and safeguardind assets against loss.」と説明している。
 公監査の世界では、INTOSAIが策定した「Fundamental Principles of Public-Sector Auditing」は、公監査には、「Financial audit」(財務書類監査)、「Performance audit」(業績監査)、「Compliance audit」(遵守監査)の三つがあるとした上で、Performance audit について次のように説明している。

Performance audit focuses on whether interventions, programmes and institutions are performing in accordance with the principles of economy, efficiency and effectiveness and whether there is room for improvement. Performance is examined against suitable criteria, and the causes of deviations from those criteria or other problems are analysed. The aim is to answer key audit questions and to provide recommendations for improvement.


 これが公監査の3Eである。

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