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合議が整わなかった住民請求監査結果

 平成29年の地方自治法改正で監査委員の合議が整わなかった場合にも監査結果を公表する途ができた。改正後の第199条第13項がそれで、「監査委員は、第九項の規定による監査の結果に関する報告の決定について、各監査委員の意見が一致しないことにより、前項の合議により決定することができない事項がある場合には、その旨及び当該事項についての各監査委員の意見を普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会その他法律に基づく委員会又は委員に提出するとともに、これらを公表しなければならない。」と規定された。これは、議会請求監査、首長要求監査及び周期的点検活動と任意監査についての規定であり、同種の規定が選挙民の直接請求及び共同設置する機関の監査についても置かれた。しかし、住民請求監査については置かれていない。総務省の監査基準(案)は「第3章 報告基準」に「監査委員は、監査の結果に関する報告の決定について、各監査委員の意見が一致しないことにより、前項の合議により決定することができない事項がある場合には、その旨及び当該事項についての各監査委員の意見を議会、長及び関係のある委員会又は委員に提出するとともに公表するものとする。」となっているが、これは、周期的点検活動と任意監査を対象としていて、直接請求や住民請求監査については「法令の規定により監査委員が行うこととされている監査、検査、審査その他の行為(監査等を除く。)については、法令の規定に基づき、かつ、本基準の趣旨に鑑み、実施するものとする。」とされていて、監査委員に委ねられている。この合議不成立に関する規定は、改正法附則第2条第1項で法律施行日(平成32年(令和2年)4月1日)以後に行われる監査の結果に関する報告の決定について適用するとされている。
 と分かったのだが、合議不成立の場合の規定を、先行して、しかも住民請求監査で適用している事例があった。
 東京新聞サイトが12月20日に掲出した「分割発注で工事随意契約 川崎市教委の違法性認定」〔大平樹〕は、川崎市監査事務局が19日、市教育委員会が本年度に随意契約で発注した市立小学校二校の補修工事について、不必要な分割発注などの違法性があったとの監査結果を発表したと報じる。監査委員4人のうち3人は、発注が市に損害を与えたと認定したものの、市職員OBの代表監査委員が損害と認めず、監査委員全体として結論は出さなかったとのこと。元市職員(70)=宮前区=が10月、関係した職員が損害を補填(ほてん)するように求める住民監査を請求していたもので、監査結果によると、宮前平小学校の物置補修工事で、地方自治法が随意契約で発注できる上限の250万円を超えないよう分割したとのこと。同小と富士見台小の工事では、工事後に予算執行のための書類を作成する手続き違反があったとも。監査委員全体の意見として、見積もりを随意契約した発注先からしか取っておらず「不祥事防止の観点からも問題がある」と批判し、「組織的に不適正な事務処理が常態化していた」と指摘したとのこと。市教委だけでなく、「全庁的な課題として重く受け止め、組織や制度の抜本的な見直しに向けて取り組みを推進するよう強く望む」と求めたという。福田紀彦市長は同日の定例会見で「大変深刻に受け止めている」と述べ、改善に取り組む意向を明らかにしたと記事は伝える。

 川崎市監査委員のサイトには請求者への通知文(PDF形式, 683.98KB)と記者発表(PDF形式, 66.90KB)が掲出されている。
 ちなみに、請求者への通知文では、合議に至らなかった各監査委員の意見を監査結果に付記した理由を、次のように「参考までに」と説明している。

2 監査委員の判断
 住民監査請求に基づく監査及び勧告についての決定は、法第 242 条第8項において、監査委員の合議によるものと規定されている。
 監査委員は、本件措置請求を受理した後、慎重に審議を重ね、本件各工事の執行に係る違法性・不当性については後記(1)のとおり概ね意見が一致したが、富士見台小学校工事の執行方法の適否、また、本件各工事の契約締結による損害の発生の有無については意見が一致せず、最終的に合議不調となり、監査及び勧告についての決定には至らなかった。なお、意見が一致しなかった事項については、参考までに、後記(2)に各監査委員の意見を列記する。


  また、記者発表では、次のように説明している。

 令和元年10月21日付けで提出された住民監査請求について、川崎市監査委員は、 地方自治法第242条第4項の規定に基づき監査を実施しましたが、同条第8項に定 める監査委員の合議に至らず、監査及び勧告について決定できませんでしたので、次 のとおり概要をお知らせします。
 ‥
5 監査委員の意見
 住民監査請求に基づく監査及び勧告についての決定は、地方自治法第242条第 8項において、監査委員の合議によるものと規定されています。 監査委員は、本件住民監査請求を受理後、慎重に審議を重ね、本件各工事の執行 に係る違法性・不当性については概ね意見が一致しましたが、富士見台小学校にお ける各工事の執行方法についての適否、また、本件各工事における損害の発生につ いては意見が一致しませんでした。 ただし、事案の重要性に鑑み、職員のコンプライアンス意識、組織の構造的な問 題及び制度の課題について、全監査委員としての意見を付しました。


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