自治体監査制度の充実強化

 地方自治法等の一部を改正する法律(平成29年法律第54号)が6月9日に公布されていた。理由は次のとおり。

 地方公共団体等における適正な事務処理等の確保並びに組織及び運営の合理化を図るため、地方制度調査会の答申にのっとり、地方公共団体の財務に関する事務等の適正な管理及び執行を確保するための方針の策定等、監査制度の充実強化、地方公共団体の長等の損害賠償責任の見直し等を行うとともに、地方独立行政法人の業務への市町村の申請等関係事務の処理業務の追加等の措置を講ずるほか、所要の規定の整備を行う必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 同日付け大臣通知「地方自治法等の一部を改正する法律の公布及び施行について(通知)」の監査制度部分(総行行第125号)は次のとおり。

二 監査制度の充実強化
1 監査基準に従った監査等の実施等
ア 監査委員は、監査基準(法令の規定により監査委員が行うこととされてい る監査、検査、審査その他の行為(以下「監査等」という。)の適切かつ有効な実施を図るための基準をいう。以下同じ。)に従い、監査等をしなけれ ばならないものとされたこと。(第198条の3第1項関係)
イ 監査基準は、監査委員が定めるものとされたこと。(第198条の4第1 項関係)
ウ 監査委員は、監査基準を定めたときは、直ちに、これを普通地方公共団体 の議会、長、委員会及び委員に通知するとともに、これを公表しなければな らないものとされたこと。(第198条の4第3項関係)
エ 総務大臣は、普通地方公共団体に対し、監査基準の策定又は変更について、 指針を示すとともに、必要な助言を行うものとされたこと。(第198条の 4第5項関係)
 監査委員は、当該指針を踏まえて監査基準を策定又は変更されたいこと。 また、既に自主的に監査の実施に関する基準を定めている普通地方公共団体においては、当該基準がアの監査基準と同様の性質・内容であれば、当該基準をアの監査基準として位置付けることも可能であるが、当該指針を踏まえ、 必要な検討を行うことが求められること。
2 監査委員の権限の強化等
ア 監査委員は、監査の結果に関する報告のうち、普通地方公共団体の議会、 長又は委員会若しくは委員において特に措置を講ずる必要があると認める事項については、その者に対し、理由を付して、必要な措置を講ずべきことを 勧告することができ、当該勧告の決定は、監査委員の合議によるものとされ たこと。この場合において、監査委員は、当該勧告の内容を公表しなければ ならないものとされたこと。(第199条第11項及び第12項関係)
イ 監査委員からアによる勧告を受けた普通地方公共団体の議会、長又は委員 会若しくは委員は、当該勧告に基づき必要な措置を講ずるとともに、当該措 置の内容を監査委員に通知しなければならないものとされたこと。この場合において、監査委員は、当該措置の内容を公表しなければならないものとさ れたこと。(第199条第15項関係)
ウ 監査委員は、監査の結果に関する報告の決定について、各監査委員の意見 が一致しないことにより、合議により決定することができない事項がある場合には、その旨及び当該事項についての各監査委員の意見を普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある委員会又は委員に提出するとともに、これ らを公表しなければならないものとされたこと。(第75条第5項及び第1 99条第13項関係)
エ 監査委員は、普通地方公共団体の組織及び運営の合理化に資するため、監 査の結果に関する報告に添えてその意見を提出する場合には、当該意見の内容を公表しなければならないものとされたこと。(第199条第10項関係)
3 監査体制の見直し
ア 条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができるものとされたこ と。(第196条第1項関係) 当該条例の提出権は、長並びに議員及び委員会の双方に存するものである が、当該条例を制定するかどうかは、監査委員と議会の監視機能における役 割分担の観点等を踏まえ検討されたいこと。
イ 監査委員に常設又は臨時の監査専門委員を置くことができるものとし、監 査専門委員は、専門の学識経験を有する者の中から、代表監査委員が、代表 監査委員以外の監査委員の意見を聴いて、これを選任するものとされたこと。 (第200条の2第1項及び第2項関係)
ウ 監査専門委員は、監査委員の委託を受け、その権限に属する事務に関し必 要な事項を調査するものとされたこと。(第200条の2第3項関係)
エ 監査専門委員は、非常勤とするものとされたこと(第200条の2第4項 関係)
オ 監査専門委員に対する報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は、第2 03条の2第4項の規定に基づき、条例で定めなければならないものである こと。
4 条例により包括外部監査を実施する地方公共団体の実施頻度の緩和 政令で定める市以外の市又は町村で、契約に基づく監査を受けることを条例 により定めたものの長は、条例で定める会計年度において、当該会計年度に係る包括外部監査契約を、速やかに、一の者と締結しなければならないものとさ れたこと。この場合においては、あらかじめ監査委員の意見を聴くとともに、 議会の議決を経なければならないものとされたこと。(第252条の36第2 項関係)
三 決算不認定の場合における地方公共団体の長から議会への報告規定の整備
 普通地方公共団体の長は、決算の認定に関する議案が否決された場合において、 当該議決を踏まえて必要と認める措置を講じたときは、速やかに、当該措置の内容を議会に報告するとともに、これを公表しなければならないものとされたこと。 (第233条第7項関係)
四 地方公共団体の長等の損害賠償責任の見直し等
1 普通地方公共団体は、条例で、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会の 委員若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員(第243条の2の2第3 項の規定による賠償の命令の対象となる者を除く。以下「普通地方公共団体の 長等」という。)の当該普通地方公共団体に対する損害を賠償する責任を、普 通地方公共団体の長等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、 普通地方公共団体の長等が賠償の責任を負う額から、普通地方公共団体の長等 の職責その他の事情を考慮して政令で定める基準を参酌して、政令で定める額 以上で当該条例で定める額を控除して得た額について免れさせる旨を定めることができるものとされたこと。(新第243条の2第1項関係) 「職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない」とは、一般的には、普通 地方公共団体の長等が違法な職務行為によって、当該普通地方公共団体に損害 を及ぼすことを認識しておらず、かつ、認識しなかったことについて著しい不 注意がない場合を指すものであること。
2 普通地方公共団体の議会は、1の条例の制定又は改廃に関する議決をしよう とするときは、あらかじめ監査委員の意見を聴かなければならず、当該意見の 決定は、監査委員の合議によるものとされたこと。(新第243条の2第2項 及び第3項関係)
3 住民監査請求があったときは、監査委員は、直ちに当該請求の要旨を当該普 通地方公共団体の議会及び長に通知しなければならないものとされたこと。 (第242条第3項関係) 4 普通地方公共団体の議会は、住民監査請求があった後に、当該請求に係る行 為又は怠る事実に関する損害賠償又は不当利得返還の請求権その他の権利の放 棄に関する議決をしようとするときは、あらかじめ監査委員の意見を聴かなけ ればならず、当該意見の決定は、監査委員の合議によるものとされたこと。 (第242条第10項及び第11項関係) 当該意見聴取は、議会が議長名で監査委員に対して文書で意見照会を行い、 これに対して監査委員が文書で回答するといった運用が想定されること。
5 住民訴訟の対象となる違法な行為又は怠る事実に関する損害賠償又は不当利 得返還の請求権その他の権利の放棄については、平成24年の各最高裁判決 (別紙参照)の趣旨に加え、本改正により1の措置が講じられたことを受け、 1の条例の制定の有無にかかわらず、その趣旨を踏まえ、より一層慎重な判断 が求められることとなること。

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