リース会計基準をめぐる昨年の動き

 東洋経済サイトが2月2日に掲出した「リース業界が猛反発 新会計基準案の問題点(1)」〔浪川 攻 =週刊東洋経済2011年1月29日号〕は、国際財務報告基準(IFRS)を作成する国際会計基準審議会(IASB)が、2010年8月に草案を公表し、意見を募集した新たなリース会計基準について、締切日となった同年12月15日に、国内のリース業をはじめ、不動産や海運などリースの利用頻度の高い業界が相次いで反対の意見書を提出しており、海外のリース業界の多くも、歩調を合わせたもようと伝える。反対する理由は、草案どおりの基準が採用された場合の影響が、あまりにも大きいためで、草案のポイントは、大きく二つあり、一つは、リース利用のメリットともいえる「資産・負債のオフバランス化(貸借対照表に計上しない取引)」の全廃、もう一つは、リース契約期間にかかわらず、実質使用期間を見積もり、リース物件を現在価値に引き直して計上する、というもので、これを航空機リースといった大規模資産のみならず、小口、短期のリース取引にも適用する方向という内容。日本の場合、2007年3月に会計基準を変更し、リースを利用する会社が物件の購入代金や諸費用のほぼ全額をリース料として支払い、中途解約できないファイナンスリースの会計処理については、通常の売買に近いとして、すでにオンバランス化されているが、今回の草案は、リース満了後に中古市場などでの物件の売却を見込んで残価設定をするオペレーティングリースについても、オンバランス化する方針を示しているとのこと。つまり、リースを利用していた企業は、資産が膨張し、自己資本比率が急激に低下するリスクがあり、リースを利用する企業からは、「会計処理、事務対応が極めて煩雑化し、関連コストも増大する。リース活用をやめざるをえなくなる」(大手製造業の関係者)との声も上がっているとか。新しい会計基準は、オペレーティングリースと取引形態が同じ不動産賃貸にも適用されることになり、賃貸物件の利用者は、最長使用期間を見積もる必要が生じ、見積もり期間をオーバーすると、新たな見積もり期間に基づく現在価値を計上せざるをえないのも難点とか。不動産業界は「使用期間をあらかじめ設定しオフィスなどを賃貸するなんて現実離れも甚だしい。混乱するだけ」と指摘しているとのこと。新会計基準の目的は、財務の透明性追求だが、会計処理の煩雑さなどによって、従来より実態がわかりにくくなる可能性があると記事は評する。リース業界などの反発は、草案の内容だけにとどまらず、新基準導入に対する検討の進め方にも不満を募らせているとの由。そもそも、日本のIFRS導入の発端となったのは、IASBと、日本の企業会計基準委員会(ASBJ)が07年8月8日に交わした「東京合意」であり、同合意は、日本の会計基準がIFRSのレベルに達していない項目について、期限を定め、差異を解消する作業を確認したもので、重要な差異26項目については08年に解消しており、残りの項目は、11年6月30日までに解消することになっているが、東京合意は「11年6月30日という目標設定は、同日後に適用となる新たな基準を開発する現在のIASBの主要プロジェクトにおける際に係る分野については適用されない」とし、IFRSとの共通化の作業から例外扱いする分野も示しているとのこと。その一つがリースであるのに、現在はあたかも、その例外規定が無視されたかのような形で論議が行われている感は否めないと記事は評する。もう一つの不満は、IFRSを適用する範囲であり、昨年夏に開催された企業会計審議会では、連結決算に先行して適用(ダイナミックアプローチ)し、単体決算は判断を一時留保(連単分離)するとの方針を確認しており、これは、グローバルベースで活動する企業の場合、グローバルベースの連結開示基準を採用するのは、当然の流れといえるが、税法や会社法など各国の文化と直結する単体決算は、各国の基準との調整に時間がかかってしまうためであり、IASBのおひざ元である欧州でも仏、独は連単分離を採用しており、しかも、現状はファイナンスリースですらオフバランスの扱いとなっているにもかかわらず、日本ではリース会計のあり方が世界とはかけ離れているかのように語られ、直近では連単同時に適用するような議論が進む実態に、リース業界は反発しているとの由。「主要国のリース業界と意見交換したところ、われわれと基本的な認識が変わらないことがわかった」と小幡尚孝・リース事業協会会長(三菱UFJリース会長)は語り、同協会はすでに、日本、米国、欧州、カナダ、中国、豪州のリース事業協会と共同の意見書をIASBに提出しているとか。ただ、それ以前に日本の場合、「国家的戦略や実務的発想が希薄な会計基準策定の動きに問題がある」(小幡氏)としているとのこと。議論の着地次第では、設備投資の重要な選択肢であるリースの需要が大幅に減少し、ひいてはマクロ経済への打撃に直結すると記事は説いている。

コメントの投稿

非公開コメント

ブログ内検索
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
リンク
監査関係ブログ
【】内はカテゴリー ↓トップはライブドアニュース
月別アーカイブ
RSSフィード
プロフィール

reticent_auditor

  • Author:reticent_auditor
  • 寡黙な監査人
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる