新日本が厳しい

 ダイヤモンド・オンラインが10月18日に配信掲載した「会計士増の旗振り役が採用減 新日本監査法人のお粗末経営」〔「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史〕は、監査法人の最大手、新日本有限責任監査法人を叩く内容であり、業界が一丸となって会計士を現在の約2万人から2018年に約5万人にまで増やすことを目指すなか、今年の採用を大幅に減らす見込みと報じる。背景には、過去の過剰採用や監査企業の契約打ち切りといったお粗末な組織運営があると記事は伝える。記事によると、今年7月末、公認会計士を擁する監査法人業界で「新日本監査法人が、新人会計士の採用をストップするらしい」との観測が駆け巡り、衝撃が走ったとか。新日本といえば、監査法人トーマツ、あずさ監査法人、そしてあらた監査法人を含めた4大監査法人の一つであり、そのなかでも2669人の会計士を抱える最大手の新日本が公認会計士試験合格者の採用を取りやめるというのだから、業界関係者が驚くのも無理はないとの由。監査法人業界では、昨今の内部統制や四半期開示制度の導入など業務の拡大傾向に伴い、資格者の増員が急務となっており、日本の公認会計士数は2万0996人と、米国の34万人と比べても圧倒的に少ないため、目下、業界団体の公認会計士協会は金融庁と足並みを揃え、2018年までに約5万人にまで会計士を増やすことを目指している最中とか。その成否のカギを握っていたのが、4大監査法人の採用数であり、公認会計士になるには試験に合格するだけでなく、2年間の実務経験を経る必要があるが、その受け皿の中心的役割を果たしてきたのが監査法人、なかでも例年、全体の約8割の採用を支えている4大監査法人との由。そうした矢先、最大手として採用拡大の旗振り役だったはずの新日本が、本来の役割を果たすどころか採用をゼロに絞るとなれば、業界内で反発を招くことは明らかだったとか。「本音をいえば新人なんて採用したくないのはウチも同じ。新日本の姿勢は無責任に過ぎる」(別の大手監査法人関係者)との声もあり、結局、新日本は今年、なんとか100人前後の採用を行うことでこうした反発を抑えたい意向だが、それでもピーク時に比べて約9割減、前年比でも約6割減というありさまであり、トーマツが200人程度は採用する予定であることを鑑みても、明らかに少ないと記事は評する。新日本が業界内で批判を浴びたのは、なにもこれが初めてのことではなく、08年のリーマンショック以降、その行動が最も疑問視されたのが、監査報酬のダンピングだとか。東京都内、東京証券取引所1部上場企業の監査について、当初、前年度の監査報酬3600万円を5000万円に引き上げたいと打診した新日本が、別の中堅監査法人が3000万円を提示したところ、焦った新日本は夜遅くになって同社を訪問し、今度は2700万円まで引き下げるといってきたと記事は伝える。これには企業の担当者も「最初の高額提示はいったい何だったのか」と呆れるほかなく、結局この企業は、新日本への不信感を募らせ、別の監査法人に監査人を変更しているとか。こうした引きとめもさることながら、なりふり構わぬダンピングで顧客を獲得している例も目につき、たとえばオリンパスは、監査報酬を4億0700万円から2億2500万円へとおよそ半減させてあずさから奪い取るなど、監査報酬を引き下げて得た顧客は枚挙にいとまがないとの由。そもそも日本における監査報酬は、米国の半分以下。09年3月期に導入された内部統制をきっかけに多少は上がったものの、それでも監査報酬の引き上げは監査法人にとって共通の悲願であったが、そうしたなかで、リーディングファームであるはずの新日本によるダンピングとあって、顧客企業に限らず業界内でも「何を考えているのか」(別の大手関係者)とブーイングの嵐が巻き起こったとのこと。採用減にダンピングと、新日本がちぐはぐな行動に出ているのは、これまでの過剰採用のツケが回ってきたという事情があり、06年から08年にかけて、なんと毎年500~700人もの試験合格者を採用し続けており、それも会計士の増員という本来の目的ではなく、上場企業の内部統制導入を控え、足りない要員を新人で補填しようとしたにすぎなかったとか。初任給を引き上げ、接待までして新人獲得に奔走したとも。新人の年収は約600万円で、その他経費も含めると、3年間で採用した新人の人件費だけで固定費は約170億円、売上高に当たる業務収入(約1000億円)の17%にも及ぶとか。加えて、07年に解散し新日本が承継した旧みすず監査法人出身の会計士の存在も重くのしかかっており、新日本は旧みすずに所属していた会計士のうち、約半数の1000人強の雇用を引き受けたが、その過程で、高額な監査報酬が見込めるトヨタ自動車、ソニー、旭化成といった大型クライアントまであらたに奪われてしまう始末で、「これが失敗の元だった」と、ある新日本の社員は振り返っているとか。それどころか、新日本は訴訟リスクの高まりを受けて、このタイミングで継続企業の前提に疑義の注記が付された企業を中心に契約を大量に破棄していき、そのため今では「仕事がない会計士が溢れている」(関係者)状況で、揚げ句の果てには社員に1000万円の新規売り上げ目標を設定し、自ら監査を断った企業にもせっせと足を運び、再び営業をかけているとの由。さらに、決算の「数字づくり」(関係者)にも必死であり、10年6月期決算は、09年6月期の16億6400万円の赤字から一転、約3億円の黒字に持ち込んだが、収益が改善したわけではなく、むしろ募集した社員を含む早期退職者の割増退職金などで特別損失12億円が計上されるとあって、今回も赤字は必至と見られていたとのこと。だが、2期連続の赤字となれば、監査法人は地方公共団体といった公共部門の監査を引き受けられなくなり、この部門は特にクライアント全体に占める割合が高く、「これを失うことだけはなんとしても避けたかった」(新日本関係者)とか。そこで手始めに、年に2回支払う職員の賞与を一律25万円カット。それでも足りず、最後には今年4~6月の社員の給料を減らし、「収支がほぼゼロになるまで調整した」(関係者)とか。さらに複数の関係者によれば、提携先である英監査法人大手アーンスト・アンド・ヤングに毎年支払う看板使用料まで一時的に未払いとなっている模様で、金額は「売り上げの7%」(関係者)というから、わずか70億円すら支払えない状況ともいえるとも。9月後半には約400人の早期退職者を再度募集しており、むろん今回も割増退職金が支給されるはずだが、「残ってほしい職員には割増提示していない」(関係者)との声も漏れ伝わってくる。人事が辞めさせたがっているのは誰なのか、憶測は人間関係をギスギスさせ、社内には閉塞感が漂う。今期中には再度、「社員のリストラも数十人規模で行う」(新日本関係者)ことまで検討されているとのこと。この12月、監査法人は今年の試験合格者を採用するが、すでにこうした新日本の事情を察知した合格者たちは、あずさ、トーマツに殺到しており、「新日本を選ぶ受験生が極端に減っている」(大手監査法人の採用担当者)とか。皮肉にも新日本が望むとおりに、今年の採用数は減ることになりそうと記事は伝える。だが新日本には、最大手として会計士の適正な増員を図る責務があり、それが企業、ひいては投資家に対する務めでもあるはずで、それを果たさずして自らの都合ばかりを優先させるのなら、業界はおろか経済界からの信頼をも失いかねないと記事は締め括っている。

コメントの投稿

非公開コメント

ブログ内検索
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
リンク
監査関係ブログ
【】内はカテゴリー ↓トップはライブドアニュース
月別アーカイブ
RSSフィード
プロフィール

reticent_auditor

  • Author:reticent_auditor
  • 寡黙な監査人
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる