年金債務の全額計上のパブコメ

 朝日が3月12日に掲出した「年金債務、全額計上を 企業会計基準委案、11年度から」〔鯨岡仁〕は、日本の会計基準を定めている企業会計基準委員会が11日、2011年度から企業年金の積み立て不足額を企業本体の資産・負債の状態を表す「貸借対照表」に毎期、全額計上するよう求める公開草案をまとめたと報じる。「簿外」だった不足額を全額、貸借対照表に組み入れることで、企業財務の全体像を見えやすくするとのこと。ほぼ同じ措置は米国が既に導入済みで、欧州を中心に100カ国で採用されている国際会計基準(IFRS)でも検討されているが、企業財務が年金運用成績の影響を受けやすくなることから、国内には慎重論も根強く、このため、基準委は業界などの意見を聴いたうえで、年内をメドに最終案をまとめる方針と記事は伝える。企業は従業員に支払うべき「退職給付債務額」を決算期ごとにはじき出す一方、拠出した保険料を運用して「年金資産」を蓄えているが、多くの企業は債務が資産を上回っており、差額(積み立て不足額)は企業本体の会計から穴埋めしなければならないが、現行の日本基準は、不足額を営業費用などとして数年かけて分割処理し、費用処理した分を負債として貸借対照表に計上しており、このため、各期の決算には、企業が抱える不足額の一部しか反映されず、年金の資産運用が悪化して不足額が拡大すれば、残りの未計上部分がどんどん「簿外」に積み上がってしまうとか。この未計上額は貸借対照表の欄外に記されているとのこと。新基準案はこうした「簿外債務」の解消を狙っており、その期に生じた不足額は、同じ期の貸借対照表に全額計上させ、このため、運用悪化などで不足額が増えれば、企業の剰余金などを示す純資産が目減りし、自己資本比率の低下など、企業の財務指標の悪化に直結するとの由。多くの日本企業は退職者が増えて現役社員が減っており、不足額は増加傾向のため、影響は大きく、一昨年のような金融危機に襲われると、年金運用成績の悪化によって資本不足に陥る企業も出てきかねないと記事は伝えるが、「資金不足」ではないのではないか。記事は、典型的な例が会社更生手続き中の日本航空であり、09年3月期連結決算の「簿外」の積み立て不足額は3千億円超だったが、純資産は2千億円に満たず、新基準案を単純に当てはめると「債務超過」になるとつたえており、債務超過を資金不足と同じととらえているのかもしれない。大和総研によると、09年3月期で上場企業約300社の中で「債務超過」になるケースは日航以外にはないものの、不足額が純資産の5割程度に及ぶ会社は電機業界で3社ほどあるとか。また、株主に対する配当との関係も課題であり、「簿外」にあった年金債務が負債として計上されると、株主に配当として回せるお金が減る可能性も出てくるとしているが、これも勘違いのような気がする。法務省は「最終案がまとまったら、計算方法を整理したい」と語っているとか。企業が、年金債務を減らすために年金給付額を減らしたり、企業財務に影響を与えないように、受給額を保証する「確定給付型年金」から、掛け金のみを保証する「確定拠出型年金」へ移行したりする動きが加速しそうと説くが、これも会計基準の話ではないような気がする。貸借対照表上の不足額の扱いでは日米とIFRSは同じ方向だが、単年度のもうけを表す損益計算書における不足額の扱いを巡っては、IFRSと日米で意見が割れており、このため、世界の会計基準の共通化に向け、欧州と日米の間で駆け引きがありそうと記事は伝える。

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