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2カ所への要求を同一文にしている事例

 毎日新聞サイトが10月28日に掲出した「8億円かけた情報漏えい防止システム、一度も使われず廃止 会計検査院指摘」は、サイバー攻撃による政府機関からの情報漏えいを防ぐために総務省が18億円かけて開発した情報管理システムが、運用開始から2年間一度も使われないまま廃止されていたことが、会計検査院の調べで判明したと報じる。データの文字や数字がすべて画像化されてコピーもできない仕組みで、各省庁が利用を希望しなかったという。検査院は28日、総務省が需要を十分把握せずに開発を進めていたと指摘したとのこと。

 会計検査院サイトは28日に「会計検査院法第34条の規定による処置要求及び同法第36条の規定による意見表示」として、その全文(「政府共通プラットフォームにおけるセキュアゾーンの整備について」(PDF形式:783KB))を掲出した。これによると指摘の趣旨は次のとうり。

 総務省において、セキュアゾーンの整備に当たり、需要の把握、利用規模や費用対効果の検討、各府省との調整等を十分に行っておらず、その結果、セキュアゾーンが本来の目的で利用されることなく廃止され、本来の事業効果が発現していない事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。また、セキュアゾーンの整備に関して、予算の把握に基づく調査、調整等が十分でないなど、ITガバナンスが十分に機能していない事態は適切ではなく、内閣官房において改善の要があると認められる。


 前段が総務大臣に対する34条処置要求、後段が内閣総理大臣〔〕に対する36条処置要求ということだろう。サイトでの公表文を見ると、同文を双方に送ったように読めるが、そうなのか? 自分が何を要求されているか分からないのではないか? せめて送附文は別にすべきではないのか?

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普及していないシステムを普及させる事業を指摘

 朝日新聞サイトが10月28日に掲出した「交付金整備の医療システム、4道県で未使用 検査院指摘」は、医療法人などが国の交付金を受けて整備した患者情報の共有システムのうち4都県の4システムが全く使われていないなどとして、会計検査院が厚生労働省に改善を求めたと報じる。記事によると、システムは「医療情報連携ネットワーク」と呼ばれ、カルテなどの電子データを病院や診療所、介護施設との間で共有する仕組みで、厚労省は都道府県の基金に交付金を出し、都道府県は市町村や医療法人にシステム整備費の一部を基金から助成しているとのこと。検査院が、18都道県が25~29年度に支出した交付金約155億円を受けて整備された60システムの運用状況を調べたところ、東京都と千葉、愛知、鳥取各県の4システムは、整備から1年以上経つのに患者の登録がなく、東京都の別のシステムは50人以下だったとか。この5システムには交付金計約2600万円が使われていたという。

 会計検査院サイトには「会計検査院法第34条の規定による処置要求及び同法第36条の規定による処置要求」として、その全文(PDF形式:385KB)が掲出されている。これによると、指摘のポイントは次のとうり。

 事業主体がシステムの仕様の検討及びシステムの動作確認を十分に行っていなかったことから、地域医療ネットが利用可能な状態となっていない事態は適切ではなく、是正及び是正改善を図る要があると認められる。また、基金助成金により整備等を行った地域医療ネットの参加医療機関等及び参加患者が皆無となっていて、システムが全く利用されていないなどの事態、都県において、事業主体に対して、基金助成金の交付申請の際に、参加医療機関等の数及び参加患者の数の目標等を申告させ、これに基づき十分に審査を行うなどしていなかったり、道県において、地域医療ネットを整備した後のシステムの運用状況等を十分に把握しておらず、全く利用されていないなどの状況が継続している事業主体に対して十分な指導等を行っていなかったりしている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。


 もともと、時期尚早な仕組みだったのではないか。

当局で明らかにされた問題を別な角度から指摘

 時事ドットコムが10月25日に掲出した「賃金統計で不適切支出=郵送調査に3700万円-検査院」は、厚生労働省の賃金構造基本統計について、不適切な経理処理により約3710万円が支出されていたことが会計検査院の調べで分かり、検査院は厚労省に対し、研修で職員に会計法令の順守を徹底させることなどを求めたと報じる。厚労省の毎月勤労統計の不正を受け、総務省は基幹統計の一斉点検を実施しており、賃金統計でも、統計調査員が企業を訪問して調査票を配布、回収する本来の方法ではなく、郵送による調査が判明したとのこと。検査院が29、30年度に47労働局が支出した約2億3400万円の予算執行状況を調査した結果、全ての労働局で郵送調査を行い、調査員は電話での督促業務などに従事していたとのこと。郵送料や電話料などが過大になり、予算額を超過したため、目的が異なる歳出科目から約3710万円を充てていたとも。訪問のため計上された正規の旅費が流用されたケースは確認されなかったと記事は伝える。

 記事からは、総務省の一斉点検で問題が発見されたかのように読める。そこで、検査院が発表した本文(PDF形式:514KB)に当たると、問題は、郵送調査で行っていたことではなく、その執行方法であった。検査院の指摘は次のとおり。

 労働局において、賃金センサスの実施に要する経費を、貴省本省から示達されるなどした一般会計の歳出科目ではなく、一般会計と区分経理されている労働特会の歳出科目から支出したり、賃金センサス以外の他の業務を実施するために貴省本省から示達された一般会計の歳出科目から支出したりなどしている事態は適切ではなく、是正改善及び改善を図る要があると認められる。


 つまり、当局で明らかにされた問題(訪問調査のはずが郵送調査)を踏まえて、予算の反映されているはずの建前(訪問調査)と実態(郵送調査)との乖離がどのような問題を引き起こしているかを調べて不具合を発掘した、ということだろう。しかし、これは予算執行調査が期待されている役割ではないのか。

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経緯を踏まえた措置を否定する立論

 毎日新聞サイトが10月17日に掲出した「空港使用料、26億円過少 駐車場事業者など 検査院指摘」は、羽田空港の駐車場など、民間事業者による国管理空港の施設運営を巡り、国が民間事業者から受け取る使用料が、利益を少なく計算するなどの誤りにより過去4年で計26億8000万円少なくなっていたことが、会計検査院の調べで明らかになり、検査院は16日、国土交通省に改善を申し入れたと報じる。

 この申し入れは、16日に会計検査院サイトに「国管理空港の土地等に係る行政財産の使用料の算定について」〔PDF形式:428KB〕として掲出されている。「駐車場事業の収益を活用して実施されてきた経緯」を踏まえた措置を否定することで立論している。

FMSに関する報告

 朝日新聞サイトが10月18日に掲出した「戦闘機F35A、1機40億円割高で調達 検査院が報告」〔上沢博之〕は、米国の有償軍事援助(FMS)による防衛装備品の調達状況について、国会からの要請を受けて検査をした会計検査院が18日、検査結果を国会に報告したと報じ、その内容について、米国の最新鋭戦闘機F35Aの調達で、日本政府が国内企業を製造に参画させるなどしたため、1機当たりの調達価格が米国より40億円前後高くなっていたことなどが判明したと伝える。FMSでは、機密性が高く、高性能な米国の防衛装備品や関連の役務が調達でき、支払いは前払いで、納入後、精算されるが、納入まで数年かかり、原価などが非開示で検証や比較が難しいと記事は説明した上で、検査院によると、2017年度の日本のFMS調達は3882億円で、13年度の1117億円の3倍超となっていて、F35Aやオスプレイ、イージス・システム、早期警戒機E2Dなどを調達していると伝える。そして、検査院は、調達が増えているF35Aについて、1機当たりの日本の調達価格を契約内容から算出し、米国が公表した自国向けの調達価格との比較を試みたところ、日本が完成品を調達した12年度の価格は約1・2億ドル(当時の円換算で約97・7億円)で米国より約1270万ドル(同10・3億円)高く、それが日本企業が製造に参画した13年度には約1・5億ドル(同129・6億円)に跳ね上がり、米国との差は4倍の5610万ドル(同46億円)に拡大し、翌年度以降も米国より4千万ドルほど(14年度は同38・8億円、15年度は同47・6億円)高かったと伝える。

 この報告については会計検査院サイトに10月18日に「国会法第105条に基づく国会からの検査要請事項に関する検査結果の報告を行いました。」として概要(PDF形式:77KB)全文(PDF形式:1,374KB)が掲出されている。

 FMSについては、会計検査院は何回も報告を出している。平成になってからは、
・平成9年度決算検査報告で、特に掲記を要すると認めた事項として「アメリカ合衆国政府の有償援助による装備品等の調達について
・平成9年度決算検査報告で、特に掲記を要すると認めた事項として「アメリカ合衆国政府の有償援助による装備品等の調達について
・平成15年度決算検査報告で、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項として「アメリカ合衆国政府の有償援助による装備品等の調達に係る残余資金について、速やかに歳入として国庫に収納するための体制を整備するよう改善させたもの
・20年6月に参議院からあった国会からの検査要請事項に関する検査状況として平成19年度決算検査報告で「防衛装備品の一般輸入による調達について
・20年6月に参議院からあった国会からの検査要請事項に関する報告として21年10月に「防衛装備品の商社等を通じた輸入による調達に関する会計検査の結果について
 今回の報告は30年6月に参議院からあった国会からの検査要請事項に関する報告である。前回の報告では検査の方法として「合衆国政府がインターネット上で公表している防衛装備品の価格についてアメリカ合衆国国防省関係部局へ赴くなどして調査を行った。」旨を報告しているが、今回の報告においては「アメリカ合衆国において、FMSの制度や契約額の根拠、合衆国政府に支払われた前払金の管理方法等について、DSCA、合衆国政府各軍省(陸軍省、海軍省及び空軍省)等の担当者から説明を受けるなどして調査を行った。」と報告している

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農業用ため池の防災工事必要性の判定

 日本農業新聞サイトが10月22日に掲出した「ため池の防災工事 4割不適切に判定 指針順守周知を 会計検査院が農水省に要望」は、会計検査院が21日、農水省に対し、ため池防災減災事業の改善を要求したと報じる。

 この要求は会計検査院サイトに「会計検査院法第36条の規定による処置要求」として全文(PDF形式:437KB)が21日に掲出されている。ただ、この内容は、当局の指導が市町村に対して徹底されていないことを取り上げたもので、現在、農業用ため池の管理者がどういう立場にあるのか、という点をスルーしているように思える。そこには問題がなかったのだろうか。

「違法若しくは不当に財産の管理を怠る事実」に買取り請求権不行使は含まれるのか

 東京新聞サイトが10月12日に掲出した「三島駅南口再開発巡る住民訴訟 地裁が請求を却下」は、東京急行電鉄によるJR三島駅南口西街区再開発事業を巡り、三島市が土地の一部を市土地開発公社から買い取らなかったのは違法だとして、住民団体が市を訴えた訴訟で、静岡地裁は11日、原告の請求を却下する判決を出したと報じる。住民側は、市が公社の保有していた西街区の土地0.31ヘクタールを買い取って転売せず、公社が東急に直接売却したことを問題視し、市が買い取り請求権を行使すれば得られたはずの利益約2億7千万円を得られなかったことが、地方自治法違反にあたると主張したとのこと。裁判長は判決で、「買い取り請求権は金銭の給付を目的とする権利ではない。訴えは不適法」と結論づけたとのこと。判決後、原告で「三島駅南口の整備を考える市民の会」の代表らが会見し、「土地が安く売られていることはおかしい」と話したと記事は伝える。再開発は、市と公社が所有する土地0.34ヘクタールに地上14階建てのホテルを建設するもので、住民団体は平成30年1月と6月に同趣旨の住民監査請求をしたが、いずれも棄却もしくは却下されているとの由。

 

佐賀県監査委員は必要な関係人調査を行っている

 サガテレビサイトが10月11日に掲出した「県議“政務活動費”住民訴訟 一部を認めた判決が確定〔佐賀県〕」は、県議会議員の政務活動費をめぐり議員の1人に不適切な使い方があったとして、574万円余りを返還させるよう鹿島市の住民らが知事に求めた裁判で福岡高裁が、住民側の控訴を棄却し、住民側が上告しなかったため、訴えの一部を認めた判決が確定したと報じる。この裁判は、鹿島市の住民らが県議会議員に支給されている政務活動費について自民党県議1人に一部不適切な使い方があったとして574万円余りを自民党会派に返還させるよう知事に求めていたもので、1審の佐賀地裁は今年2月に「県の条例に基づく政務活動費の運用基準では食糧費にあてることは禁止されている」として訴えの一部を認め、懇談会費として支払われていた3万6千円について、自民党会派に返還させるよう県に命じる判決を言い渡していたとの由。これに対し、住民側が控訴していたが、先月26日、福岡高裁は1審判決を支持し控訴を棄却したとのこと。記事は、住民側が「私たちが問題点を指摘したあと県議のその支出はなくなった。目的の大半は達成された」として上告せず、判決が確定した伝えつつ、県議会が「おおむねこれまでの県の主張が認められた。今後とも政務活動費の適切な執行に努める」とコメントしていているとも伝える。

 本件住民訴訟に係る監査報告書(PDF:304.8キロバイト)は29年1月に公表されている。注目すべきは、支払先の企業に対して関係人調査を行い、「当該従業員の勤務実績、業務内容、政務調査委託料の積算根拠並びに総勘定元帳の雑収入で当該委託料の収入があったこと及び当該従業員へ給料が支払われていたことを確認した」ことだろう。

政務調査費充当で、事務所費の案分を争う訴訟

 紀伊民報サイトが10月8日に掲出した「和歌山県知事が控訴 政調費返還の住民訴訟」は、和歌山県議(元職含む)10人が平成23~24年度に支出した政務調査費(現・政務活動費)の一部が違法だったとして、仁坂吉伸知事に返還請求するよう命じた和歌山地裁判決について、仁坂知事が7日、内容を不服として控訴したと報じる。住民訴訟は、1人が支出した政調費計約1815万円が違法だとして、仁坂知事に返還請求するよう求めていたもので、和歌山地裁は9月20日の判決で、約8割に当たる計約1445万円(10人分)が違法支出による不当利得と認定したとの由。判決では、政務調査用の事務所が他の事務所を兼ねる場合、事務所数で案分した金額を超えた分は、政調費の使途基準に反すると判断していて、同団体が過去2回、起こした同様の訴訟では、いずれも大阪高裁での控訴審で勝訴しているとのこと。仁坂知事は8日の定例記者会見で「オフィスを兼ねる場合、全部政務調査費を充てるのはおかしい。しかし、実質的にほとんど県議としての政務調査に使われている場合、証拠を示せば別の配分があるのではないか」と述べ、案分割合を争点にして、返還請求額の減額を狙う考えを示したと記事は伝える。
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