FC2ブログ

書籍:「監査委員事務局のシゴト」(吉野貴雄著 ぎょうせい 自治体の仕事シリーズ)

 静岡県富士市で自ら希望して監査委員事務局で6年間勤務した著者が、監査委員事務局へ配属されることが決まった人に対して、不安を取り除くために執筆した本。
 著者は、配属されたときに百冊を超える本を読んだが、自治体の監査に関する本が少ないと感じたという〔198頁〕。
 著者は、監査とは保証監査である〔4頁〕としつつ、監査の観点では、合規性・正確性のほかに、経済性・効率性・有効性や実在性・網羅性があるとしている。ただし、実在性・網羅性についての説明は少なく、合規性と何が異なるのかは不明。
 公監査と財務諸表監査は3E監査の有無で大きく異なる点については、3Eの説明は詳しく行われている〔63~70頁〕。しかし、着眼点として挙げられている「切り口」は観念的であり、定例監査で発掘できるものとは異なっている。そもそも、合規性と同様に着眼点を例示できるはずという思い込みが財務諸表監査からのアプローチを思わせる。もっとも、公監査における3Eの重要性は意識されており、「自治体の監査における課題」の一つとして挙げている「マネジメントに活かせた監査ができているか?」〔96頁〕において3Eの重要性を説いている。
 公監査関連の書籍に共通する問題点として、報告基準に関する説明が少ないことがある。この本も例外ではなく、わずかに「処置の区分」と題したコラムで静岡県と茨木市の例を挙げているに止まる。
ISBN978-4-324-10418-7
https://www.amazon.co.jp/%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%82%B4%E3%83%88-%E5%90%89%E9%87%8E-%E8%B2%B4%E9%9B%84/dp/4324104182/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1514709199&sr=1-1&keywords=%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%82%B4%E3%83%88

公監査における3E

 3Eとは、Economy,Efficiency,Effectivenessの頭文字であり、これらは、通常「経済性・効率性・有効性」と訳されている。ここで表現されているものは、COSOの改訂内部統制フレームワークでも用いられている。このフレームでは対象(目的)を「OPERATIONS(運用)」「REPORTING(報告)」「COMPLIANCE(遵守)」の三つのカテゴリーに分けた上で、そのうち「Operation Objectives」について「These pertain to effectiveness and efficiency of the entity's operation, including operational and financial performance goals, and safeguardind assets against loss.」と説明している。
 公監査の世界では、INTOSAIが策定した「Fundamental Principles of Public-Sector Auditing」は、公監査には、「Financial audit」(財務書類監査)、「Performance audit」(業績監査)、「Compliance audit」(遵守監査)の三つがあるとした上で、Performance audit について次のように説明している。

Performance audit focuses on whether interventions, programmes and institutions are performing in accordance with the principles of economy, efficiency and effectiveness and whether there is room for improvement. Performance is examined against suitable criteria, and the causes of deviations from those criteria or other problems are analysed. The aim is to answer key audit questions and to provide recommendations for improvement.


 これが公監査の3Eである。

続きを読む

大阪府監査委員の上半期定期監査における3Eは5件

 大阪府監査委員が29年9月に議会等へ提出した平成29年度上半期の定期監査結果は、「施策事業に関するもの」が14件記載されている。この報告では、3Eか否かは報告の文言からは不明であるが、内容からは、このうち6件(「行政財産の引継ぎ等に係る取扱いについて」、「借用財産の登録について」、「使用許可及び貸付状況に関する「実地調査チェックリスト」の周知徹底等について」、「実行委員会方式(百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録推進本部会議)における分担金支出について」、「工事執行依頼方式について」、「学校法人等への経常費補助金の支出管理について」)は、統制不備を指摘したものと理解できる。
 また3件は施策の徹底を求めるなど行政過程に疑問を呈しているもので、広い意味では統制不備の指摘と言えよう。「災害対応力及び地域防災力の強化について」は、施策の迅速な推進を求めるもので、3Eとは言い難く、統制不備の指摘と言えよう。「「主要事業マネジメントシート」の導入効果と今後の活用等について」は、執行側がおそらくはなし崩し的に廃止しようとしている煩雑な内部プロセスについて、「導入効果が十分に検証・ 評価されないまま、予算要求の 必須資料とせず、行政経営課で の取りまとめ及びホームページ での公表を行わないなど取扱いが変更されている。また、その 取扱いの変更及び今後の「事業重点化」の取組みの実施方法に ついて、府民に対する説明が行 われていない。」ことを指摘しているが、これなどは、3Eの観点からとは言い難い。むしろ、民間経営手法の安易な導入の弊害を分析して安楽死の途を提示した方がすっきりしたとも理解できる。「大阪府私立小学校及び中学校の設置認可等に関する審査基準について」は、書類の保存を問題視しているところは統制不備の指摘であるが、行政判断に疑義を呈している内容も含まれている。
 残る5件が3E指摘と言い得るものである。「社会福祉施設等における防犯に係る安全性の確保について」は、施策の不徹底を指摘しているが、情報資源の活用不足という指摘でもあり、その意味で3Eと言い得る。「彩都インキュベーション施設に係る補助事業について」は、施設退去後の把握が不十分で効果検証が行われていないとの指摘であり、3E促進の指摘と言える。「府営公園の指定管理者公募に係る競争性の確保について」は、競争性を高めるために、一定の見直しを行ったものの、競争性が低下している実状を指摘したもので3E監査と言い得る。「府立学校における再生資源化可能なゴミ等の処分について」は、173校のうち38校で古紙類を一般ゴミと併せて有償処分している実状を指摘しており、3E監査と言い得る。「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づく交通安全特定事業計画の作成及び公表並びに音響信号機の整備・運用について」は、計画がホームページ上で公開されていないことと音響信号機を整備したうち2 か所で整備後1年程度の短期間で運用 を停止し、現在もその状態が続いている実状を指摘したもので、3E監査と言い得る。

当局発表の自主調査結果を踏まえて行う公監査機関の第三者調査

 12月26日にNHKサイトに掲出された「遺骨収集事業めぐる不正経理で厚労省職員65人処分」は、海外に残る太平洋戦争の戦没者の遺骨を収集する事業をめぐって、使途不明金や不適正な経理処理などが明らかになったことを受けて、厚生労働省は65人の職員を停職や減給、または訓告などの処分としたと報じる。記事よると、明らかになったのは会計検査院の検査によってであり、「太平洋戦争の戦没者の遺骨を収集したり調査したりする厚生労働省の事業では、現地で通訳などの費用を支払う場合に備えて、派遣する職員に経費を前払いする制度がありますが、会計検査院の調査で、昨年度までの6年間に880万円余りの使途不明金が確認されました。さらに、前払い金を出発前に旅行会社などに支払うといった不適正な経理処理がおよそ4億5400万円に上っていたことが明らかになりました。」と記事は伝えている。
 「明らかになった」という表現を用いているのは、会計検査院が指摘したというより、契機は厚生労働相自身の調査だったからであろう。平成28年度決算検査報告の不当事項第97号では、次のように説明している。

 厚生労働省は、28 年度に実施した海外遺骨収集等事業において、援護局の職員が車両借 上料の金額を水増しした領収証書により資金を捻出してこれを現地における懇親会費等に充 てるなど、計 14,184 米ドル(邦貨換算額計 1,702,080 円)の前渡資金の経理が不適正であった として、援護局の職員 3 名を処分した旨を 29 年 1 月に公表している。
 そこで、本院は、合規性等の観点から、23 年度から 28 年度までの6 か年度に実施された海外遺骨収集等事業の実施に当たり臨時資金前渡官吏に対して交付された前渡資金の会計経理は会計法令に従い適正に行われているかに着眼して、厚生労働本省において会計実地検査を行った。検査に当たっては、当該 6 か年度における海外遺骨収集等事業の実施に当たり臨 時資金前渡官吏に任命された延べ 295 名(実人数 63 名)に交付された前渡資金 991,530,772 円 を対象として、現金出納簿、前渡資金支払決議書、領収証書及びその他関係書類を精査する とともに、関係者から前渡資金の会計経理の状況を聴取するなどして検査した。
 検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。


 この不当事項の事案名は「海外遺骨収集等事業の実施に当たり、臨時資金前渡官吏が事実と異なる内容の前渡資 金支払決議書を作成するなどして、海外派遣先の現地において事業の実施に必要な経 費の支払を現金で自ら行う場合に限り使用することができる前渡資金を海外派遣に先 立ち国内で使用したり、領収金額を水増しした領収証書を提出させて同額の前渡資金 を支払ったこととしたりするなどしていて、前渡資金の会計経理が著しく適正を欠い ていたもの」と長い。
 

3E指摘は合規性指摘と何が異なるのか

 3E指摘は、3E原則に基づく指摘である。合規性指摘は統制逸脱を指摘するもの(統制不備も含まれるがここでは議論を単純化する。)で、その財政統制は3E原則確保のためのものであるから、類似性はある。異なる点は、合規性指摘は、会計行為(不作為を含む)の当否を課せられた規範に基づいて認定するのに対し、3E指摘は3Eが確保されていない実状を問題視することであって、会計行為前の不作為を改めさせることに主眼 。
 例えば、神奈川県監査委員の29年の指摘は、「学校側の事情等により指導助手の派遣がキャンセルされた回数が1,159回に及んでいる」ことを放置していることを問題視しているのであって、個々のキャンセルを問題視しているのではない。個々の会計行為の責任を問う合規性監査に馴染んだ者にとって不十分な監査と理解されるかもしれないが、3E監査が責任を問うのは担当者ではなく、監督者であり統制責任者である。この相違を理解していないと3E監査は展開できないことになる。
 東京都監査委員の29年3E指摘も同様である。

東京都監査委員の29年定例監査における3E指摘は2件

 東京都監査委員の29年定例監査結果報告書には、「主な指摘事例」として6件上げられているが、そのうち3E指摘と呼び得るのは「検診結果の異常値について、原因分析を十分に行っていなかったもの」と「最新の情報がホームページで提供されていなかったもの」の2件と思う。

続きを読む

神奈川県監査委員の定期監査報告書(29年10月)における3E指摘

 神奈川県監査委員が29年10月に議会等へ報告した平成29年定期監査結果報告書には、3E監査の結果が1件指摘されている。件名は「県立高等学校及び県立中等教育学校に対する外国語指導助手の派遣に関する件」といい、教育委員会高校教育課が、人材派遣事業者と締結している、指導助 手を学校に配置する業務委託契約に関するものである。問題視しているのは、学校側の事情等により指導助手の派遣がキャンセルされた回数が1,159回に及んでいるという実状であり、ネイティブスピ ーカーの話す英語やその考え方に触れる機会が相当数失われることになると、本事業において、当初想 定された効果が十分得られないおそれがあること、また、学校側の事情等により指導助手の派遣がキャンセルされた場合には、人材派遣事業者への支払額は減額されないことにな っていることから、本事業の効率的な実施のためにも、学校側の事情等によるキャンセルを防止する必要があることを指摘している。平成 28 年度の契約総額が270,563,877 円という数字はあるものの、キャンセル回数1159の分母や、キャンセルした相当額は示されておらず、議会の質疑に委ねる形となっている。また、何らかの改善策を講じることで抑止できたキャンセルがどの程度あったのかの目安が示されていれば、もっと良い指摘になったと思われる。

検査官は検査実施の業務には従事しない

 毎日サイトが12月18日に掲出した「会計検査院  防衛省特定秘密を閲覧 法施行後初」〔青島顕、前谷宏〕は、会計検査院が今年1月、防衛省を検査する際に特定秘密情報を閲覧したことを明らかにしたと報じる。26年の特定秘密保護法施行後、会計検査で特定秘密の提供を受けたのは初めてとのこと。記事によると、検査院は秘密保護法案の閣議決定前の25年9月、同法には会計検査の際に特定秘密の提供に支障の出る恐れがある規定があるとして「すべてを検査するとしている憲法の規定上、問題」と内閣官房に指摘し、同法の条文の修正を求めたものの認められなかったが、毎日新聞が27年にこの問題を報道した後、内閣官房は「秘密事項について検査院から提供を求められた際には提供しているが、法の施行により取り扱いに何らの変更を加えるものではない」とする通知を関係機関に出したとの由。記事は、防衛省によると、検査に提供したのは陸上自衛隊の装備品の性能に関する情報で、検査官が要請し、陸自を訪れて閲覧したと伝えているが、「検査官」は検査業務に従事しないことから、事務総局職員のはず。

 ちなみに、特定秘密には該当しないが、報告に際して、契約弾薬数を明示していない指摘も存在する。

公監査機関については議会が定める

 財政議会主義の一翼を担う公会計機関については、議会が決める

日本国憲法第90条第2項 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
地方自治法第202条 この法律及びこれに基く政令に規定するものを除く外、監査委員に関し必要な事項は、条例でこれを定める。

決算書の監査報告に盛り込む決算外の情報

 会計検査院の平成28年度決算検査報告では、「第6章 歳入歳出決算その他検査対象の概要」の「第1節 国の財政等の概況」に「第4 国の財政状況」が新設された。前回までは「第4 個別の決算等」とされ、「歳入歳出決算等の検査対象別の概要は第2節に記述するとおりであるが、国の会計等のより的確な理解に資するために、……について、その現状を述べると次のとおりである。」と説明された上で、「……」という特定の財政の動向について記述が為されてきた。しかし、前々回の平成26年度では「純計額でみた国の財政状況」を、また前回の平成27年度では「国の財政状況」を取り上げているのに、標題は「個別の決算等」としたままで、内容に見合わない標題となっていた。今回は標題を替えた上で説明を「歳入歳出決算等の検査対象別の概要は第2節に記述するとおりであるが、国の財政等のより的確な理解に資するために、決算でみた、その現状を述べると次のとおりである。」としたものの、従前の文章を活かそうとするあまり、「その」が何を指すのか不明確な説明となっている。
 ただ、国の決算の審査に当たり、補足情報を提供しようとする意義は高いと思う。ちなみに、この「個別の決算等」を記述するようになったのは、平成10年度が最初であり、そこでは次のように述べられていた。

 歳入歳出決算等の検査対象別の概要は第2節に記述するとおりであるが、国の会計等のより的確な理解に資するために、今後、これらの決算状況等を個別に取り上げることにした。
 そこで、今回は、交付税及び譲与税配付金特別会計(交付税及び譲与税配付金勘定)の決算について取り上げることとし、その現状を述べると次のとおりである。


 このように、決算に関して、補足的な情報提供を行うことは決算書類点検活動における公的資源活用度向上のための報告であり、3E監査と言える。
 同様のことは地方自治体でも見受けられ、例えば、議会提出の決算書に盛り込まれていない債務に関する情報を決算審査意見書に記載することも行われている。

議会と公監査機関

 財政議会主義によって議会制度は成立する。財政議会主義に基づかない議会は翼賛機関に過ぎない。そして、財政議会主義を機能させるのが公監査機関である。公監査機関が議会の代理人として機能していなければ、財政議会主義は機能しているとは言い難い。
 執行事績についての説明を踏まえて判断する公監査活動を理解していないと、公監査機関に予算審査権を与えようとする試みにつながる。公監査機関は事前点検には不向きだ。1880年に発足した当時の会計検査院に予算審査権が付与されていたのは、未だ議会が存在しなかったために過ぎない。
 基本的に会計検査院が予算編成にもの申すことはないが、結果を示して議会に注意を喚起することはある。過去には、「エネルギー対策特別会計エネルギー需給勘定において、過年度の不用額の発生要因を十分に見極め、歳出予算の見積りを行う際に反映させるなどして剰余金を減少させるよう意見を表示」した(平成20年10月)こともある。
 直近の検査報告(平成28年度決算検査報告第4章「第3節 特定検査対象に関する検査状況」「第1 国の財政健全化への取組について」(PDF形式:388KB))でも、補正予算でプライマリーバランスが悪化することについて「取組方針に設定された指標が、補正予算が執行さ れることにより、取組方針上当初予算で達成を求められているような水準からどの程度かい 離することになるかについて、補正予算の編成等の過程では示されていない」ことに言及している。
ブログ内検索
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
リンク
監査関係ブログ
【】内はカテゴリー ↓トップはライブドアニュース
月別アーカイブ
RSSフィード
プロフィール

reticent_auditor

  • Author:reticent_auditor
  • 寡黙な監査人
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる