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「相当の確実さをもって予測される場合」の要件

 毎日新聞サイトが3月25日に掲出した「IR誘致 市有地提供巡る監査を実施せず 「要件満たさず」 /神奈川」は、カジノを含む統合型リゾート(IR)の横浜港・山下ふ頭への誘致を巡り、同ふ頭の市有地を払い下げたり貸与したりしないよう林文子市長に勧告することを求めた住民監査請求で、横浜市監査委員が18日付けで監査を実施しないと決めたことを請求者のかながわ市民オンブズマンが24日に明らかにしたと報じる。

 この決定は、公式サイトに「市有地の払下げ等に関するもの」として、請求受付日「令和2年3月9日」、結果等「却下(PDF:154KB)」、結果等決定日「令和2年3月18日」、掲載日等「令和2年3月24日」として掲出されている。これによると根拠は、次の要件を満たしていないというもの。

 法第242条第1項は、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員について、財務会計上の違法若しくは不当な行為又は怠る事実があると認めるときは、当該普通地方公共団体の住民が監査を求め、当該普通地方公共団体の被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる住民監査請求について規定しています。また、これらの財務会計上の行為には、相当の確実さをもって予測される場合を含むことが規定されています。
  相当の確実さをもって予測される場合とは、単にその可能性が漠然と存在するというだけでなく、当該財務会計上の行為にかかわる諸般の事情を総合的に考慮して、当該行為が違法になされる可能性、危険性が相当の確実さをもって客観的に推測される程度に具体性を備えている場合をいうと解するのが相当です(平成12年6月29日福岡高裁判決同旨)。

町の職員が理事を務めるNPO法人へ町が業務を委託した事件

 日本海新聞が3月26日に掲出した「2358万円返還請求 大山王国不適切事務住民訴訟」は、大山町がNPO法人大山中海観光推進機構(大山王国)に委託した業務で不適切な事務処理があったとして、住民団体が同町に対し、同法人と元町幹部職員の男性、前町長に約2800万円を返還させるよう求めた住民訴訟の判決で、鳥取地裁が25日、2358万円の返還を同法人や元職員に求めるよう町に命じたと報じる。

 本件の住民請求監査の結果は、公式サイトに「平成29年2月20日付け住民監査請求の監査結果について」として掲出されている。それによると、監査委員は、1,112,400円の返還を命じている。この監査請求には、事実を知ったのは事務執行監査の「平成28年12月22日付報告書」 によってである旨の記載がある。この事務執行監査は、地方自治法第199 条第6項の規定に基づく首長要求監査であり、町の職員が理事を務めるNPO法人に町が業務を委託していた事件について監査したものである。

高裁で住民側が逆転敗訴

 読売新聞サイトは1月31日に「産廃処分場巡る訴訟、1審判決取り消し…住民側の請求棄却」を掲出し、鹿児島県薩摩川内市の産業廃棄物最終処分場「エコパークかごしま」建設を巡り、住民らが三反園知事に公金支出の差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が31日に福岡高裁宮崎支部であり、裁判長は、土地の賃料の支出差し止めと、支払い済みの2億6400万円を伊藤祐一郎前知事に請求するよう命じた1審・鹿児島地裁判決を取り消し、住民側の請求を棄却したと報じる。

地裁が用地買収での損害を認定

 公権力であればこそ、商取引の場では私人として行動する必要があることは「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」(昭和24年法律第256号)が第3条で「政府契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。」と説くところであり、特定の場所には特定のものしかなく、場所の代替性に欠ける土地については土地収用法((昭和26年法律第219号)が用意されているところである。
 毎日新聞サイトが1月30日に掲出した「新火葬場用地、買収額が「高額過ぎ」 奈良市が敗訴 奈良地裁」〔加藤佑輔〕は、奈良市が同市横井町に計画している新火葬場を巡り、市が地権者に支払った用地買収額は不当に高額だとして、住民109人が市に対し、仲川げん市長と地権者に損害賠償として1億6772万円を請求するよう求めた住民訴訟の判決が30日に奈良地裁であり、裁判長は、「買収は市長としての裁量権の範囲を逸脱している」として、市に対し仲川市長に同額を請求するよう命じたと報じる。判決によると市は約11ヘクタールの土地買収に際し、不動産鑑定会社2社に鑑定を依頼し、それぞれ5339万円と4930万円という結果を得たが、実際の契約では地権者に1億6772万円を支払った上、現地に埋まっていた産業廃棄物の撤去費用1億4265万円も市が負担したとのこと。裁判長は、市が火葬場を早期に整備するため、代金を地権者の要望に近づける意図があったと認定し、鑑定額の3倍以上の代金を「あまりにも高額に過ぎる」と指摘して、市長の裁量権を逸脱して違法だったと判断したとの由。ただ原告側が求めていた産廃処理費の支払い差し止めについては認めなかったとのこと。原告代表(74)は判決後の記者会見で「妥当な判決。判決を基にして行政や議会での審議をまともにやってほしい」と話したとか。仲川市長は「本市の主張が一部認められず残念。判決内容を十分に精査し、今後の対応を検討したい」とのコメントを出したとも。

 この住民訴訟に係る住民監査請求の監査結果と思われるものは、奈良市監査委員のサイトに次の2件が掲出されている。
「新斎苑用地取得」に関する監査結果 平成31年3月29日告示(合議不調)(PDF 376KB)
「新斎苑用地取得」に関する監査結果 平成30年4月27日告示(棄却、一部却下)(PDF 358KB)
 後者の棄却の事例では、鑑定価格を採用しなかったことについては「本件土地取得に当たり市は、不動産鑑定業者2者に対して鑑定評価を依頼したが、不動産鑑定評価は民間取引における適正な時価を算出するものであるため、本件土地近隣における奈良県による用地買収事例は鑑定評価額算出の基礎に含むことができず、また、本件土地の近隣では民間売買事例がなかったため、離れた土地の売買事例をもとに鑑定評価額が算出された。このような特殊な鑑定評価額は、用地取得事務の公平、公正及び透明性を確保しつつ、権利者の理解を得て、事業の円滑な推進を図るために制定された奈良市用地取得事務 取扱要領の想定している鑑定評価額とはいえない。また、事務取扱要領は事務処理を進め ていく上での指針、基準を定める内部規律であると捉えられていることから、遵守するこ とは当然のことながら、一般的に法令とは扱われないものであり、上記のような諸事情を勘案すると、本件事例においては、奈良市用地取得事務取扱要領の制約を受けるものでは ないと判断した。」と認定している。ちなみに、市議会での市長の説明は「その結果といたしまして、2 社の鑑定評価額の平均であります平米 463 円、そして、 岩井川ダムに伴います県の計画地側の土地購入額を、これを現在の評価額に算定をいた し直しまして、これが平米2,566円ということになります。この 2つの単価を平均いた しまして、平米1,514円ということで地権者に提案をさせていただきまして、これで内 諾をいただいている状況にございます。 」というもの。
 前者は合議不調の例であるが、奈良市監査委員は過去にも合議不調の例がある。

合議が整わなかった住民請求監査結果

 平成29年の地方自治法改正で監査委員の合議が整わなかった場合にも監査結果を公表する途ができた。改正後の第199条第13項がそれで、「監査委員は、第九項の規定による監査の結果に関する報告の決定について、各監査委員の意見が一致しないことにより、前項の合議により決定することができない事項がある場合には、その旨及び当該事項についての各監査委員の意見を普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会その他法律に基づく委員会又は委員に提出するとともに、これらを公表しなければならない。」と規定された。これは、議会請求監査、首長要求監査及び周期的点検活動と任意監査についての規定であり、同種の規定が選挙民の直接請求及び共同設置する機関の監査についても置かれた。しかし、住民請求監査については置かれていない。総務省の監査基準(案)は「第3章 報告基準」に「監査委員は、監査の結果に関する報告の決定について、各監査委員の意見が一致しないことにより、前項の合議により決定することができない事項がある場合には、その旨及び当該事項についての各監査委員の意見を議会、長及び関係のある委員会又は委員に提出するとともに公表するものとする。」となっているが、これは、周期的点検活動と任意監査を対象としていて、直接請求や住民請求監査については「法令の規定により監査委員が行うこととされている監査、検査、審査その他の行為(監査等を除く。)については、法令の規定に基づき、かつ、本基準の趣旨に鑑み、実施するものとする。」とされていて、監査委員に委ねられている。この合議不成立に関する規定は、改正法附則第2条第1項で法律施行日(平成32年(令和2年)4月1日)以後に行われる監査の結果に関する報告の決定について適用するとされている。
 と分かったのだが、合議不成立の場合の規定を、先行して、しかも住民請求監査で適用している事例があった。
 東京新聞サイトが12月20日に掲出した「分割発注で工事随意契約 川崎市教委の違法性認定」〔大平樹〕は、川崎市監査事務局が19日、市教育委員会が本年度に随意契約で発注した市立小学校二校の補修工事について、不必要な分割発注などの違法性があったとの監査結果を発表したと報じる。監査委員4人のうち3人は、発注が市に損害を与えたと認定したものの、市職員OBの代表監査委員が損害と認めず、監査委員全体として結論は出さなかったとのこと。元市職員(70)=宮前区=が10月、関係した職員が損害を補填(ほてん)するように求める住民監査を請求していたもので、監査結果によると、宮前平小学校の物置補修工事で、地方自治法が随意契約で発注できる上限の250万円を超えないよう分割したとのこと。同小と富士見台小の工事では、工事後に予算執行のための書類を作成する手続き違反があったとも。監査委員全体の意見として、見積もりを随意契約した発注先からしか取っておらず「不祥事防止の観点からも問題がある」と批判し、「組織的に不適正な事務処理が常態化していた」と指摘したとのこと。市教委だけでなく、「全庁的な課題として重く受け止め、組織や制度の抜本的な見直しに向けて取り組みを推進するよう強く望む」と求めたという。福田紀彦市長は同日の定例会見で「大変深刻に受け止めている」と述べ、改善に取り組む意向を明らかにしたと記事は伝える。

 川崎市監査委員のサイトには請求者への通知文(PDF形式, 683.98KB)と記者発表(PDF形式, 66.90KB)が掲出されている。

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「違法若しくは不当に財産の管理を怠る事実」に買取り請求権不行使は含まれるのか

 東京新聞サイトが10月12日に掲出した「三島駅南口再開発巡る住民訴訟 地裁が請求を却下」は、東京急行電鉄によるJR三島駅南口西街区再開発事業を巡り、三島市が土地の一部を市土地開発公社から買い取らなかったのは違法だとして、住民団体が市を訴えた訴訟で、静岡地裁は11日、原告の請求を却下する判決を出したと報じる。住民側は、市が公社の保有していた西街区の土地0.31ヘクタールを買い取って転売せず、公社が東急に直接売却したことを問題視し、市が買い取り請求権を行使すれば得られたはずの利益約2億7千万円を得られなかったことが、地方自治法違反にあたると主張したとのこと。裁判長は判決で、「買い取り請求権は金銭の給付を目的とする権利ではない。訴えは不適法」と結論づけたとのこと。判決後、原告で「三島駅南口の整備を考える市民の会」の代表らが会見し、「土地が安く売られていることはおかしい」と話したと記事は伝える。再開発は、市と公社が所有する土地0.34ヘクタールに地上14階建てのホテルを建設するもので、住民団体は平成30年1月と6月に同趣旨の住民監査請求をしたが、いずれも棄却もしくは却下されているとの由。

 

佐賀県監査委員は必要な関係人調査を行っている

 サガテレビサイトが10月11日に掲出した「県議“政務活動費”住民訴訟 一部を認めた判決が確定〔佐賀県〕」は、県議会議員の政務活動費をめぐり議員の1人に不適切な使い方があったとして、574万円余りを返還させるよう鹿島市の住民らが知事に求めた裁判で福岡高裁が、住民側の控訴を棄却し、住民側が上告しなかったため、訴えの一部を認めた判決が確定したと報じる。この裁判は、鹿島市の住民らが県議会議員に支給されている政務活動費について自民党県議1人に一部不適切な使い方があったとして574万円余りを自民党会派に返還させるよう知事に求めていたもので、1審の佐賀地裁は今年2月に「県の条例に基づく政務活動費の運用基準では食糧費にあてることは禁止されている」として訴えの一部を認め、懇談会費として支払われていた3万6千円について、自民党会派に返還させるよう県に命じる判決を言い渡していたとの由。これに対し、住民側が控訴していたが、先月26日、福岡高裁は1審判決を支持し控訴を棄却したとのこと。記事は、住民側が「私たちが問題点を指摘したあと県議のその支出はなくなった。目的の大半は達成された」として上告せず、判決が確定した伝えつつ、県議会が「おおむねこれまでの県の主張が認められた。今後とも政務活動費の適切な執行に努める」とコメントしていているとも伝える。

 本件住民訴訟に係る監査報告書(PDF:304.8キロバイト)は29年1月に公表されている。注目すべきは、支払先の企業に対して関係人調査を行い、「当該従業員の勤務実績、業務内容、政務調査委託料の積算根拠並びに総勘定元帳の雑収入で当該委託料の収入があったこと及び当該従業員へ給料が支払われていたことを確認した」ことだろう。

政務調査費充当で、事務所費の案分を争う訴訟

 紀伊民報サイトが10月8日に掲出した「和歌山県知事が控訴 政調費返還の住民訴訟」は、和歌山県議(元職含む)10人が平成23~24年度に支出した政務調査費(現・政務活動費)の一部が違法だったとして、仁坂吉伸知事に返還請求するよう命じた和歌山地裁判決について、仁坂知事が7日、内容を不服として控訴したと報じる。住民訴訟は、1人が支出した政調費計約1815万円が違法だとして、仁坂知事に返還請求するよう求めていたもので、和歌山地裁は9月20日の判決で、約8割に当たる計約1445万円(10人分)が違法支出による不当利得と認定したとの由。判決では、政務調査用の事務所が他の事務所を兼ねる場合、事務所数で案分した金額を超えた分は、政調費の使途基準に反すると判断していて、同団体が過去2回、起こした同様の訴訟では、いずれも大阪高裁での控訴審で勝訴しているとのこと。仁坂知事は8日の定例記者会見で「オフィスを兼ねる場合、全部政務調査費を充てるのはおかしい。しかし、実質的にほとんど県議としての政務調査に使われている場合、証拠を示せば別の配分があるのではないか」と述べ、案分割合を争点にして、返還請求額の減額を狙う考えを示したと記事は伝える。

提訴後に弁済が行われた事例

 中日新聞サイトが8月10日に掲出した「安八町への寄付金訴訟で請求棄却 提訴後に町長が同額を弁済」は、安八町が町民2人からの計1万6千円の寄付金の受け取りを拒否したことは違法として、別の男性が、堀正町長に返金による町への損害額を支払うことなどを求めた住民訴訟で、岐阜地裁が9日に請求を棄却したと報じる。判決によると、堀町長は提訴を受け、昨年10月31日に町民に返還した金額と同額の1万6千円を支払っており、裁判長は判決理由で「(堀町長の)弁済により、損害賠償請求権は消滅したと言うべきだ」などと述べたとか。訴状によると、町民2人は2017年11月までにそれぞれ町に8千円を寄付したが、町民が別の住民訴訟を提起したことや、町職員を業務上横領容疑で刑事告発したことなどを理由に、受け取りを拒否されたと主張していたとの由。

無償譲渡した土地を売却された自治体の損害

 毎日新聞サイトが7月28日に掲出した「ユニチカ住民訴訟 原告市民らが上告へ 名古屋高裁判決不服に」〔川瀬慎一朗〕は、.化学繊維メーカーのユニチカが愛知県豊橋市から無償譲渡された土地を市に返還せず売却したのは契約違反だと訴えた住民訴訟で、市長が同社に請求すべき賠償額を1審判決の約3分の1に減額した名古屋高裁判決を不服として、住民側が上告するとの方針を28日に決めたと報じる。同市内でこの日あった原告団会議で議決したもので、原告団長は「控訴審判決には納得いかない点もあり、最高裁でしっかり判断してほしい」と話したとのこと。1審判決は住民側の訴えを全面的に認め、売却は市の利益を侵害する不法行為に当たるとし、売却益の63億円全額を同社に請求するよう市長に命じていた、16日の控訴審判決は返還義務を事業に直接関係のない用途に使っていた土地に限り、賠償額を約20億9400万円としたという。

 豊橋市監査委員の平成28年度監査公表第2号「住民監査請求:ユニチカ株式会社に対する損害賠償請求の行使を怠る事実について」(PDFファイル/156KB)は、「そもそも豊橋市は本件工場用地の所有権を有していない」という認定をしている。

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