書籍:「よくわかる「自治体監査」の実務入門」(村井直志著 日本実業出版社)

書籍:「よくわかる「自治体監査」の実務入門」(村井直志著 日本実業出版社)ISBN 978-4-534-05553-8
 表紙の返しに示されている「財務書類の基礎知識から、残高管理の業務フロー、内部統制制度の設計プロセス、CAAT(コンピュータ利用監査技法)、これから求められる監査基準のイメージまで、あるべき「財務監査」と実務を、自治体職員向け研修の人気講師としても知られる著者が、自治体監査に従事している担当者向けにわかりやすく解説。」という紹介どおりの良書。
 目次構成は「第1章 財務監査等に必要な会計の基礎知識」「第2章 地方自治法と監査実務」「第3章 財務監査等の基礎知識」「第4章 財務監査等の着眼点」「第5章 不適正な会計処理等への対峙法」となっている。
 第1章には「会計」とあるが、これは複式簿記会計であり、財政議会主義の下での公会計ではない。筆者が公認会計士であることの限界であろうが、それ故に「財務監査」を中心にしている潔さは評価されるべきと思う。
 3E監査については、財務監査においても必要であるという認識は有しており、第2章の「監査等の目的」の項には「このように、3E監査(……)と法令等への準拠性について留意する必要があります。」との記載があり、また、「第4章 財務監査等の着眼点」も、その認識で記載されている。
 報告内容については、「監査報告書(イメージ)」の記載があり、そこでは、「第3 監査の結果」として「今回監査を実施したところ、次のとおり注意、改善すべき点が認められたので、これらに留意し、適正で合理的かつ効率的な事務事業の執行に一層努力されたい。」として「①指摘事項」「②意見」としている。この文章からは、監査の結果を執行側に提出するという趣旨が読み取られ、議会へ提出するものであるという認識に欠けているのではないかという危惧が生じる。また、どういうものが「指摘事項」になるのか、という解説も見当たらない。
 以上のような点はあるが、本書が、自治体監査に従事する人にとって必読の書であることは間違いなかろう。

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書籍:「監査委員事務局のシゴト」(吉野貴雄著 ぎょうせい 自治体の仕事シリーズ)

 静岡県富士市で自ら希望して監査委員事務局で6年間勤務した著者が、監査委員事務局へ配属されることが決まった人に対して、不安を取り除くために執筆した本。
 著者は、配属されたときに百冊を超える本を読んだが、自治体の監査に関する本が少ないと感じたという〔198頁〕。
 著者は、監査とは保証監査である〔4頁〕としつつ、監査の観点では、合規性・正確性のほかに、経済性・効率性・有効性や実在性・網羅性があるとしている。ただし、実在性・網羅性についての説明は少なく、合規性と何が異なるのかは不明。
 公監査と財務諸表監査は3E監査の有無で大きく異なる点については、3Eの説明は詳しく行われている〔63~70頁〕。しかし、着眼点として挙げられている「切り口」は観念的であり、定例監査で発掘できるものとは異なっている。そもそも、合規性と同様に着眼点を例示できるはずという思い込みが財務諸表監査からのアプローチを思わせる。もっとも、公監査における3Eの重要性は意識されており、「自治体の監査における課題」の一つとして挙げている「マネジメントに活かせた監査ができているか?」〔96頁〕において3Eの重要性を説いている。
 公監査関連の書籍に共通する問題点として、報告基準に関する説明が少ないことがある。この本も例外ではなく、わずかに「処置の区分」と題したコラムで静岡県と茨木市の例を挙げているに止まる。
ISBN978-4-324-10418-7
https://www.amazon.co.jp/%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%82%B4%E3%83%88-%E5%90%89%E9%87%8E-%E8%B2%B4%E9%9B%84/dp/4324104182/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1514709199&sr=1-1&keywords=%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%82%B4%E3%83%88

公監査における3E

 3Eとは、Economy,Efficiency,Effectivenessの頭文字であり、これらは、通常「経済性・効率性・有効性」と訳されている。ここで表現されているものは、COSOの改訂内部統制フレームワークでも用いられている。このフレームでは対象(目的)を「OPERATIONS(運用)」「REPORTING(報告)」「COMPLIANCE(遵守)」の三つのカテゴリーに分けた上で、そのうち「Operation Objectives」について「These pertain to effectiveness and efficiency of the entity's operation, including operational and financial performance goals, and safeguardind assets against loss.」と説明している。
 公監査の世界では、INTOSAIが策定した「Fundamental Principles of Public-Sector Auditing」は、公監査には、「Financial audit」(財務書類監査)、「Performance audit」(業績監査)、「Compliance audit」(遵守監査)の三つがあるとした上で、Performance audit について次のように説明している。

Performance audit focuses on whether interventions, programmes and institutions are performing in accordance with the principles of economy, efficiency and effectiveness and whether there is room for improvement. Performance is examined against suitable criteria, and the causes of deviations from those criteria or other problems are analysed. The aim is to answer key audit questions and to provide recommendations for improvement.


 これが公監査の3Eである。

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3E指摘は合規性指摘と何が異なるのか

 3E指摘は、3E原則に基づく指摘である。合規性指摘は統制逸脱を指摘するもの(統制不備も含まれるがここでは議論を単純化する。)で、その財政統制は3E原則確保のためのものであるから、類似性はある。異なる点は、合規性指摘は、会計行為(不作為を含む)の当否を課せられた規範に基づいて認定するのに対し、3E指摘は3Eが確保されていない実状を問題視することであって、会計行為前の不作為を改めさせることに主眼 。
 例えば、神奈川県監査委員の29年の指摘は、「学校側の事情等により指導助手の派遣がキャンセルされた回数が1,159回に及んでいる」ことを放置していることを問題視しているのであって、個々のキャンセルを問題視しているのではない。個々の会計行為の責任を問う合規性監査に馴染んだ者にとって不十分な監査と理解されるかもしれないが、3E監査が責任を問うのは担当者ではなく、監督者であり統制責任者である。この相違を理解していないと3E監査は展開できないことになる。
 東京都監査委員の29年3E指摘も同様である。

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